オードヴィ庄内の杜氏ブログ

ひな街道・創作雛酒

2022年02月03日


酒田には昔から庶民の間に伝わる「つるし雛・傘福」があります。
このつるし飾りは、伊豆稲取「ひなのつるし飾り」・九州柳川「さげもん」と並んで「日本三大さげもん」に数えられています。

酒田は古くからの湊町で、最上川舟運によって内陸から運ばれる米の集積地であり、江戸初期に、河村瑞賢が開拓した西廻り航路によって関西の京都・大坂と結ばれたことにより、北前船の出入りが繁盛となり、当時の海上交通網の要所港として大いに賑わいました。
その賑わいは井原西鶴の「日本永代蔵」で、「西の堺、東の酒田」と並んで称されており、「本間様には及びもないが、せめてなりたや 殿様に」と唄われるまでの勢力を誇っていた豪商であり豪農の本間家が何代にもわたり栄えました。
本間家は酒田のまつり「山王祭」を盛り上げるために、迫力のある大亀の周りと背中の傘福に数々の縁起物が飾られている「亀傘鉾」という山車を宝暦12年(1762年)に京で作らせ北前船に乗せて酒田に運ばせています。
この「亀傘鉾」は、今でも毎年五月に行われる酒田まつりの山車行列に加わり、市中を引き回しています。

このように、酒田湊は北前船により「米」や、一級品として名を馳せた「紅花」などが上方向けに運ばれ、これによって酒田の商人は多大な富を築いたといわれています。
酒田の大富豪には、回船問屋の「鐙屋」や日本一の豪農として知られる「本間家」などが居て、現在もこれらの旧家は往事の面影を伝えています。
上方からは塩や木綿等の日用品と共に様々な上方文化が乗せられて来ましたが、その一つに豪華絢爛上方仕様の「雛人形」もあったのです。酒田の豪商たちは競って京都から豪華な雛人形を買い求め、それが上方の大阪で北前船に積み込まれて酒田に運ばれてきたのです。

雛人形は江戸時代に全国に広まりましたが、北前船によって運ばれた雛人形は、当時の酒田の繁栄と商人の富の象徴のごとく、豪華絢爛で風格があり、非常に贅を尽くしたものが多いのが特徴です。
当時の雛人形は「享保雛」「治郎左衛門雛」「古今雛」様々と種類があり、人形の数、質において他地域を圧倒する雛人形が酒田の旧家には残され、昭和の酒田大火もくぐり抜けて今まで大切に保管されてきました。
また、この雛人形が運ばれて来た「雛街道」は様々な文化も運びました。上方関西の文化はもちろんもこと江戸の文化も一緒に運ばれ庄内の奥深くに根付いています。

一方で現代の雛人形としては、明治26年(1893)に建造され、築百年以上経過した農業倉庫「山居倉庫」の一部を改装して、観光の拠点「酒田夢の倶楽」を作るときの目玉として平成16年に日本を代表する人形師・辻村寿三郎に製作を依頼して「さかたの雛遊び」を創作し展示しました。
現在は、酒田市が買い取った酒田を代表する元料亭、1895年(明治28年)に建築された「山王くらぶ」に移されて陳列公開されています。

この「さかたの雛遊び」を創作した背景にある物語とは、
江戸時代の全国遊郭番付に明記されている「出羽の国・酒田今町遊郭」は九番目に位置しているほど全国でも有数な遊郭であり、この酒田遊郭の遊女逸話が残されています。
北前船が入港すると荷下ろしや荷積み、次に向かう港に対して追い風になるまで風待ちの待機を余儀なくされて1~3ヶ月程度の滞在は当たり前だったようです。
すると何が起こるか。船頭たちは陸に上がれば毎晩遊郭通いとなり、ある遊女がその北前船の船頭に恋をしてしまい、酒田での逗留を一日でも長引かせたいというはかない思いから、海の神様の怒りを誘い海が荒れ狂うようにと、今で言うところの灯台・日和山にある常夜灯に毎晩自分の腰巻きを括り付けて、悪天候と風向きが変わらないよう神に祈ったと。
そこまでして船頭が海に出れないよう逆さまな願いを神様に祈ったという切なくも悲しい物語が語り継がれています。
このような歴史背景を持つ酒田湊、しかしそれは今を昔「強者どもが夢の跡」である。
それを踏まえて、湊まち酒田だからこその「雛人形」ということで、北前船時代に大繁盛した酒田遊郭を表現した雛人形を創作しました。辻村寿三郎の世界観にして、遊女の雛人形は唯一無二であり、なんとも妖艶な世界を醸し出しています。是非その目で一度お確かめください。

往時を振り返り、古き良きものを大切にする習慣とそれをお披露目する場所として、毎年山形県内では庄内地域をはじめとして、各地の観光施設等で一斉展示する「やまがた雛街道・庄内ひな街道」を実施しています。
県内各地で2月初めから4月まで開催される雛街道イベントでは酒田においても各種の「雛人形」が展示されます。
本間本邸には時代を異にする様々な雛人形が飾られ、本間美術館の「古今雛」や、相馬楼の享保年間に流行った享保雛(1716 〜 1736年)、更には、県内に数多く残る古典雛の中でも飛びぬけて素晴らしい「加藤家のお雛様」が展示されます。
これは、江戸後期の古今雛で、高さ約40cm、目は玉眼、殊に雌雛は、冠の細工は精緻で胸元の重ねは重厚、錦の着物には龍・鳳凰の細密な刺繍が施されています。

当酒蔵では、この雛街道イベントに合わせて「雛酒」を10年前から造って来ました。
今年は、山形県の誇る最新米「雪若丸」で醸した純米酒と純米にごり酒を使用した男雛と女雛を作り、
2月5日より鶴岡の観光物産館にて展示販売を致します。
コロナ過でオミクロンの蔓延が心配ですが、是非皆様には「雛酒」を飲んで家族の無病息災を祈願してください。

ハイ、お後がよろしいようで。

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